館山沖にはかつて「沖ノ島」と「高ノ島」という二つの小島が浮かんでいたが、元禄地震と関東大震災で地盤が隆起し、砂が堆積して陸と繋がった。
「高ノ島」は埋め立てられて、今は海上自衛隊館山航空基地になっている。
「沖ノ島」は国定公園に指定されており、自衛隊基地の奥から細い砂の道を渡ると辿り着ける。浮上した海底地層が豊かな潮溜りを形成し、いつも磯遊びの人たちで賑わう無人島だ。沖ノ島もかつては日本軍の防衛拠点で、岩を切り開いて作られた洞窟が存在しているが、戦跡だと示す看板はなく、きらきらした海が映える撮影スポットとして人気である。
房総半島の先端に位置する館山は、江戸時代末期から太平洋戦争にかけて本土防衛の最前線だった。その一方で、古来より黒潮と親潮が交わる豊かな漁場であり、海を渡ってきた人たちとの交流の場でもあった。

この海岸には様々な来訪者が足跡を残し、絶え間なく打ち寄せる波が洗い続けてきた。
「浮上」は、それらの過去をベースに館山の風景を撮影し、言葉を紡ぎ、フィルムを海水で劣化させたイメージを用いて物語を構成する。


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