制作の発端は、鳥類博物館で出会った行き倒れの鳥。その鳥は台風によって遠い国から連れ去られて、近くの路地で死んでいたものらしい。鳥の死んだ路地に行くと、洗車の泡が道路に流れて純白になっていた。それを見て、私は白い砂漠へ行こうと思った。ニューメキシコ州ホワイトサンズは巨大な古代湖が干上がって出来た雪花石膏の砂漠。かつて原爆実験が行われた場所であり、現在は米軍のミサイル試験場。砂漠の町は清潔な新興住宅街で、不法入国者への取り締まりが厳しく夜の国道にはアメリが軍の見張りがいる。巨大スーパーには行方不明の子供の張り紙。標高が高く、昼は太陽が眩しくて暑いくらいなのに夜は凍えた。眠る時、脚が冷えて痛かった。そのせいか、脚が動かなくなる女の子と、彼女の杖になってしまう男の子の夢を見た。五感とイメージの錯誤。私はその夢に関する物語を作る事にした。


I met a stuffed fallen bird at the Birds Museum. It is said that the bird was taken away from a far country by the typhoon and died in a nearby alley. When I went to the alley where the bird died, the foam of the car wash flowed down the road, and the road became pure white. Seeing that, I thought of going to the white desert.

White Sands in New Mexico is a plaster snowflake desert created by the drying up of a huge ancient lake. It used to be the site of an atomic bomb test, and is now the U.S. missile test site. The desert town is a clean, new residential area,
where the crackdown on illegal immigrants is strict, and on the national road at night there are guards of amelis. There
was a poster of a missing child at the huge supermarket. The altitude of the city was high, and the sun was bright and hot during the day, but it was freezing cold at night. My legs were cold and hurt when I slept. I dreamed of a girl who couldn’t move her legs and a boy who would become her cane. A mistake between the five senses and the image. I decided to
make a story about the dream.



「逃げ遅れた」
モーテルの駐車場で男の子が青い顔をして呟いた
とても明るい夜だったので、町の子供たちは影踏み遊びをしていた
彼は本当は影踏みなどやりたくなかったのに
勝手に影を踏まれて鬼にされてしまったのだ
もう、誰か一人つかまえるまで家に帰れない

雷鳴、うなり声、稲光、燃えるような金色の瞳
ガラスのような目の女の子と男の子が車に乗り込んできた
「狼が来るから急いで」
女の子が青ざめた顔で言うと、男の子が首を振った
「違う、嵐だよ」
彼は歌うような不思議な抑揚で話す
「風はけものの叫びと似ているからね」

男の子は七歳の時に砂漠を渡ってこの町に来た
国境を越えたのは夜おそく
日と日をまたぐ時
見張りの役人は眠っていたので彼を名簿に書き加えなかった
だから彼は存在しない居住者
女の子と男の子が一緒に居ると
大人たちは恐い顔で咎める
存在している子どもと存在していないはずの子どもが一緒に居ては
みんなが混乱するだろう、とのことだった

女の子はよく夢遊病のふりをして夜を歩きまわった
心配した男の子が追いかけてきて
子守唄を歌ってくれるまで
夢の中に居るふりをしていれば誰も咎めない
大人たちは夢の中での正しい振る舞いを決めていなかったからだ

ある夜、女の子がいつものように夢の中にいるつもりで歩いていると
水たまりに躓いて転んでしまい
足がすっかり曲がってだめになった
それを知った男の子は静かな樹の下で猟銃をくわえた
女の子は男の子が死んだ樹から杖を作った
「それで、僕たちはずっと一緒に居られるようになった」
男の子が歌うように呟くと
彼の身体は急速にやせ衰えて
からからに乾いた白い枝になった